概要

概要

本調査研究の実施にあたって

情報にふりまわされず、プログラミングの考え方と方法により本質を捉え、論理的に思考し、ルールを再構築して価値を創造するスキルが、これからのIoE(Internet of Everything)時代を担う全ての人々に必須のものであり、その早い段階からの効率的かつ効果的な教育が求められています。この必要性は2020年からの日本の小学校におけるプログラミング教育必修化の動きにも裏付けられています。一方海外に目を向けると、抽象的思考の成長発達段階からのプログラミング教育のツールと教材の整備および教育が活発に進められています。 しかし具体的に何をどのようなツールと方法で教えることがどのように効果的であるのか、日本はおろか世界を見渡しても明らかとされていません。そこで本調査では、国産を含む世界の代表的なプログラミング教育・学習ツールを一堂に集めて実験的に比較検証し、各ツールの特性や効果を具体的に明らかとします。調査の結果は、それらのツールによる効率・効果を最大化した教育に資するとともに、必要な特性を補完あるいは拡充する新たなツールや教材、教育方法の新規整備開発を促します。この調査を世界に先駆けて日本で始めることで、日本の教育現場において有効性が実証されたツール・教材・教育方法の展開を進め、日本の次世代の子どもたちの国際競争力を高めることに貢献します。 なお、本調査研究は早稲田大学グローバルソフトウェアエンジニアリング研究所と株式会社フジテレビKIDSの二者による産学協同プロジェクトですので、子どもを対象とした調査・体験イベントの開催や新規開発教材・ツールの活用や流通など、両者の強みを活かしながら進めて参ります。

鷲崎 弘宜(わしざき ひろのり)
早稲田大学グローバルソフトウェアエンジニアリング研究所 所長
早稲田大学理工学術院基幹理工学部情報理工学科 教授
国立情報学研究所 客員教授
株式会社システム情報 社外取締役

本調査研究の目的

近年、子どもを対象としたプログラミング学習が注目を浴びています。2020年には小学校カリキュラムにおいては必修化の動きがあります。ここでのプログラミング学習では単に、プログラミングの方法やツールの使い方を教えるというわけではありません。プログラミングという方法を通して、物事の順序立や抽象化といったことを学ばせることが大きな目的です。しかし、課題として、どのような方法やツールを使って学習するのが効果的か不明であることが挙げられます。この課題を解決するため、プログラミング学習ツールに焦点を当て、それらのツールの特性や学習効果を分析、比較することが重要であると考えます。私たちが子どもたちにプログラミングを学習させるうえで、安易に、「Aというツールは皆が使ってる」など、という選択では高い効果を期待することができません。重要なのは、そのツールの特性を理解し、「子どもたちの動機付け」や「学習させたいこと」などに対して最大限の効果を引き出せるように適切なツールの選択をすることです。本研究では、およそ50種類のツールの特性を調査し分類することで、適切なツール選択に役立たせるための指標の作成、新たなツール作成と新規教材開発やその促進に貢献をいたします。

齋藤 大輔(さいとう だいすけ)
早稲田大学基幹理工学部情報理工学科 講師(任期付)